和太鼓の皮は何の皮? — 種類・部位と音・張替の時期
和太鼓を間近で見ると、打面に張られた皮の表情が一台ずつ違うことに気づきます。和太鼓の皮は何からできているのか、なぜ音が変わるのか、そしていつ張り替えるのか。作り手の立場から、順にご案内します。
和太鼓の皮は主に牛皮です
和太鼓の打面に張られる皮は、主に牛皮です。とくに長胴太鼓は、そのほとんどが牛皮で張られています。牛皮はバチの打撃に耐える強さと、限界まで伸ばせるしなやかさを併せ持ち、太鼓に向いた素材です。
一般に、牝牛(めうし)の皮は伸びがよく、繊維が緻密で耐久性に優れるとされ、好まれてきました。

部位によって音が変わります
牛皮は、一頭の中でも部位によって厚みや密度が違います。一般に、背中側の厚い皮は低く重い音に、お腹側の薄い皮は高く弾むような音になります。職人は一頭の皮を見極め、太鼓の種類や求める音に合わせて使う場所を切り分けます。
天然の素材ですから、打面をよく見ると、わずかなアザの跡や色の濃淡が見えることがあります。これは牛それぞれの個性であり、工業製品にはない、一台ごとの表情です。
靴や鞄の革とは違う — 鞣さない皮
靴や鞄に使われる革は、薬品などで鞣して(やわらかく加工して)仕上げます。一方、太鼓の皮は、革のように鞣してやわらかくするのではなく、生皮の張りと強さを生かして仕立てます。
さらに、張る前に数年寝かせて「枯らす」ことがあります。新しい皮は伸びやすく音も落ち着かないため、寝かせて丈夫に育ててから使います。張りたての皮が、使い込むほどに音がこなれていくのは、こうした素材の性質によるものです。
太鼓の種類による、皮の張り方と張替(張り替え)の違い
和太鼓の皮は主に牛皮ですが、太鼓の種類によって張り方が異なり、張替(張り替え)の手間も変わります。なお、一部の担ぎ桶胴太鼓では、軽さや音色の狙いから馬皮を使う場合もあります。
- 長胴太鼓 — くりぬいた胴に皮を当て、鋲(びょう)で打ち留めます。一度張ると簡単には外せず、張替は鋲を抜くところから始まる、手間のかかる仕事です。
- 締太鼓・桶胴太鼓 — 皮を紐やボルトで締めて張ります。胴と皮を分けられるため、皮だけの張替や調整がしやすい構造です。
同じ「太鼓の皮の張替」でも、種類によって作業も費用も変わります。
皮は消耗品 — 張替の時期
皮は、叩くたびに少しずつ伸び、音の張りが失われていきます。破れていなくても、音が緩む・以前の響きが出ないと感じたら、張替を考える時期です。どれくらいで張り替えるかは使い方によって大きく変わり、一概に「何年」とは言えません。
皮の張替は、専用の道具と熟練の技を要します。宮本卯之助商店では、長胴・締太鼓・桶胴ほか各種の張替を承っています。
皮を外したときに、初めて見えるもの
長胴太鼓の張替では、鋲を抜いて皮を外します。すると、胴の内側に、作られた当時の作人(職人)の名や関係者の名、過去の修理の履歴が残されていることがあります。一台の太鼓が歩んできた時間に触れられるのも、張替・修理ならではのことです。
用途に合わせて — 新調・張替・ご相談
求める音は、地域や祭礼、芸能によっても異なります。宮本卯之助商店では、ご要望を伺いながら皮選びと音作りをいたします。文久元年(1861年)から太鼓をつくり続けてきた手仕事で、はじめの一台も、長く使ってきた一台も、お手伝いします。
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