篠笛の吹き方 — 初めての音出しから運指・練習まで

篠笛は、唄口(うたぐち)に息を当てて鳴らす横笛です。初めて手にすると「息を入れても音が出ない」とつまずく方が多いのですが、音が鳴る仕組みと、唇・息・唄口の合わせ方が分かれば、少しずつ確実に鳴るようになります。本記事では、初めての音出しから、構え方・指使い(運指)・音が出ないときの対処・練習法までを順にご案内します。

篠笛は流派や曲、笛や奏者の口の形によって作法が変わります。教室や指導者の指定がある場合は、そちらを優先してください。

篠笛の音が鳴る仕組み

篠笛は、リコーダーのように「吹けば鳴る」笛ではありません。唄口の縁(エッジ)に息の流れを当て、空気の渦をつくることで音が生まれます。だからこそ、息を当てる位置と角度が少しずれるだけで鳴らなくなります。逆に言えば、合う一点を見つけてしまえば、同じ感覚で再現できるようになります。最初は「音を出す」より「音が鳴る一点を探す」つもりで取り組むと近道です。

初心者の篠笛の構え方・持ち方

  • 一般には、笛を右側に構えます。左利きの方も、教室や指導者の指定があればそちらに合わせてください。
  • 背すじを伸ばし、肩の力を抜きます。
  • 唄口の中心を下唇の中央に合わせ、唄口が少し見える角度から、音の出る位置を探します。
  • 下唇で唄口の手前3分の1ほどを覆う、という説明がよく使われます。ただし笛や唇によって合う位置は変わるので、目安として調整してください。
  • 親指は笛を安定させる支えです。唇に押しつけず、軽く触れる程度から始めます。

鏡の前で構えると、唄口と唇の位置を自分で確認・修正できます。音が出ない時期は、鏡を見ながらの練習が特に役立ちます。

音の出し方 — 唇・息・唄口の3点

音出しのこつは、次の3点に集約されます。

唇の形

唇は力を抜き、軽くほほえむような形にして、中央に小さな穴をつくります。横に強く引きすぎないのがこつです。引きすぎると息の通り道がかえって広がり、息漏れや口の力みの原因になります。

息の出し方

腹式呼吸で、細くまっすぐな息を、ゆっくり長く出します。笛を持たずに手のひらへ息を当て、一点に集まっているかを確かめる練習が有効です。短く強い息より、長く安定した息のほうが音はまとまります。

唄口への当て方とメリ・カリ

息は、唄口の向こう側の縁の少し下へ当てるイメージです。音が鳴る位置は、笛をわずかに回して探します。笛を内側に回して息を下向きにすると音は低め(メリ)、外側に回して息を上向きにすると音は高め(カリ)になります。顎を引く・上げるのは、その調整の一例です。鳴る一点が見つかったら、そのときの息と笛の震える感覚を覚えておきます。

篠笛の音が出ないときの対処 — 症状別チェック

音が出ない・うまく鳴らないときは、症状から原因をたどると直しやすくなります。

症状 主な原因 直し方
息だけ出て音が鳴らない 唄口と唇の位置・息の向きがずれている 唄口の中心を下唇の中央に。笛を少し回して、息が縁に当たる角度を探す
音がかすれる・続かない 息がまとまっていない/息が弱い 細くまっすぐ、長めの息で。手のひらに息を当て、一点に集まるか確認
低い音は出るが甲音(高い音)が出ない 息の速さ・当てる位置が足りない 息を少し細く速く。唇を締めすぎず、当てる位置を小さく調整
指穴をふさぐと鳴らない 指穴に隙間がある 指の腹や関節の間で、穴を「面」でしっかり覆う
音が裏返る・高くなりすぎる 息が強すぎる/角度が上向き 息を少し弱め、顎を引く(メリ方向)で落ち着かせる

短い息で当てようとすると難しいので、まずは長い息で、上の項目を一つずつ調整しながら探すのがこつです。

指の押さえ方と指使い(運指)

篠笛にはフルートのようなキイがなく、指で直接、指穴をふさぎます。指先で点のように押さえるのではなく、指の腹や関節の間を使って、穴を「面」で覆うのがこつです。少しでも隙間があると、音がかすれたり、上の音域に移れなくなります。

運指は、篠笛では「数字譜(じすうふ)」がよく使われます。教室や楽譜によって表記が異なるため、まずは手元の譜面に合わせてください。最初は音が出なくても構いません。曲の指の運びを先に確かめておくと、曲に入ったときに息へ意識を向けやすくなります。

※指穴の数(六孔・七孔)や運指は、笛の種類・調律・流派・曲によって異なります。本記事では運指表は載せていません。お使いの笛・お通いの教室に合わせてください。

音域 — 呂音・甲音・大甲音

  • 筒音(つつね) — すべての指穴をふさいで出す最低音。
  • 呂音(りょおん) — 低い音域。まずはここを安定して出せるように。
  • 甲音(かんおん) — 呂音の1オクターブ上の中音域。初心者の最初の関門です。
  • 大甲音(だいかんおん) — さらに上の高音域。

実用上は、呂音・甲音を中心におよそ2オクターブ、大甲音の一部まで含めるとさらに広がります。甲音・大甲音は、息を細く・速くし、鳴るポイントへ正確に当てることで出ます。速くといっても荒く吹くのではありません。最初は呂音だけで十分です。低い音が安定してから、上の音域へ進みましょう。

初心者の練習法 — 1日10分から

短い時間でも、毎日続けると感覚が身につきやすくなります。たとえば1日10分なら、次のような配分です。

  • はじめの2〜3分:笛を持たず、手のひらへ細い息を当てて、息をまとめる。
  • 次の3〜4分:呂音(低い音)を、まっすぐ長く鳴らす。
  • 残り:好きな曲の運指を、音は気にせず指だけで動かす。

最初の1週間は「呂音がまっすぐ鳴る」を目標にすると進めやすくなります。音が出てきたら、甲音、そして短い曲へ広げていきましょう。所作(構えてから吹き終えて下ろすまでの一連の動き)を整えることも、上達の土台になります。

手入れと保管 — 長く良い音で吹くために

吹き終わりは、管の内側に水分が残ります。つゆきりで内側の水分を取り、直射日光や急な乾燥を避けて保管してください。竹の笛は乾燥や衝撃で割れることがあります。持ち運びには笛袋を使うと安心です。

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どの篠笛を選べばよいか

これから一本目を選ぶ方、買い替え・買い増しをお考えの方は、調律(古典調・邦楽調・ドレミ調)や調子(本数)、銘の違いを「篠笛の選び方ガイド」で詳しくご案内しています。吹き方と合わせてご覧ください。

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文久元年(1861年)から笛と太鼓を扱ってきた宮本卯之助商店が、はじめの一本と、その鳴らし方をお手伝いします。